本書のISO 9613-2計算(第11.1節および第12.2節)、4シナリオの伝搬補正(第11.2節)、完全円筒拡散の参照計算(第11.3節)にはISO 9613-1の解析式による大気吸収係数 \(\alpha\) が用いられている。本付録では、その解析式と本書で使用した数値を一覧し、あわせて、これらの計算を再現するPython実装の所在を記す(周波数重み付け(A・C・G・Z)の数値については付録Aに別途まとめている)。
ISO 9613-1:1993「Acoustics — Attenuation of sound during propagation outdoors — Part 1: Calculation of the absorption of sound by the atmosphere」は、純音の大気吸収係数 \(\alpha\)(dB/m)を、気温\(T\)、相対湿度\(h_\mathrm{rel}\)、大気圧\(p_a\)から解析的に求める式を与えている(同規格第6.2節、式(3)〜(5))。
ここで \(T\) は絶対温度(K)、\(T_0 = 293.15\,\text{K}\)、\(p_r = 101.325\,\text{kPa}\)、\(f\)は周波数(Hz)、\(f_{rO}\)および\(f_{rN}\)はそれぞれ酸素・窒素の緩和周波数(Hz)である。緩和周波数は
で与えられ、水蒸気のモル濃度 \(h\)(百分率)は
で計算する(\(T_{01} = 273.16\,\text{K}\) は水の三重点温度)。
本書の全計算では、ISO 9613-2が標準条件として指定する10 °C・相対湿度70%・101.325 kPaを採用している(第11.1.1節で確認した通り、夏季条件20 °C/80%との差はA特性で0.7 dB以下にとどまる)。表48に、上式から得られた1/3オクターブバンド吸収係数を示す(参考として20 °C/80%の値も併記する)。
| 周波数 (Hz) | \(\alpha\) 10 °C/70% | \(\alpha\) 20 °C/80% |
|---|---|---|
| 10 | 0.003 | 0.002 |
| 12.5 | 0.005 | 0.003 |
| 16 | 0.008 | 0.005 |
| 20 | 0.013 | 0.008 |
| 25 | 0.020 | 0.013 |
| 31.5 | 0.032 | 0.020 |
| 40 | 0.051 | 0.032 |
| 50 | 0.078 | 0.050 |
| 63 | 0.121 | 0.079 |
| 80 | 0.189 | 0.126 |
| 100 | 0.280 | 0.194 |
| 125 | 0.406 | 0.298 |
| 160 | 0.592 | 0.473 |
| 200 | 0.799 | 0.708 |
| 250 | 1.038 | 1.037 |
| 315 | 1.308 | 1.495 |
| 400 | 1.609 | 2.097 |
| 500 | 1.924 | 2.760 |
| 630 | 2.324 | 3.513 |
| 800 | 2.888 | 4.335 |
| 1000 | 3.658 | 5.150 |
| 1250 | 4.815 | 6.071 |
| 1600 | 6.828 | 7.364 |
| 2000 | 9.702 | 9.000 |
| 2500 | 14.154 | 11.403 |
| 3150 | 21.344 | 15.208 |
| 4000 | 33.059 | 21.411 |
| 5000 | 50.003 | 30.522 |
| 6300 | 76.684 | 45.285 |
| 8000 | 118.382 | 69.492 |
| 10000 | 175.130 | 104.871 |
本書の第12.2節(ISO 9613-2ベースライン、9通り)、第12.3節(伝搬補正4シナリオ、36通り)、および第12.4節(完全円筒拡散の参照計算)の全1/3オクターブバンド受音レベルを再現するPythonプログラムを、以下のURLで公開している:
標準ライブラリのみで動作し、外部依存はない。プログラムの構成は以下の通り。
iso9613_1.py:ISO 9613-1の解析式による大気吸収係数 \(\alpha(f, T, h_\mathrm{rel}, p_a)\)。
iso_weightings.py:A・C特性(IEC 61672-1表3)、G特性(ISO 7196表2)、Z特性(無重み付け)。
iso_vestas_spectrum.py:Vestas V236-15MWの1/3オクターブ音響パワーレベル(表15)。
iso_layouts.py:A・B・C案の風車配置座標(第6章および第12.1節)。
iso9613_2.py:ISO 9613-2の点音源伝搬計算(球面拡散、大気吸収、海面/陸上の地面効果)。
iso_compute.py:第12.2節の9通り(3配置×3受音点)を計算し本書記載値との差分を一覧表示する。
weather_corrections.py:第11.2節の4シナリオ(屈折集音、ダクト効果、海面反射補正)。
compute_weather.py:3配置×3受音点×4シナリオ(合計36通り)の補正後受音レベルを計算する。
cylindrical_spreading.py:第11.3節の完全円筒拡散モデル。
compute_cylindrical.py:完全円筒拡散の理論上限を計算する。
iso_emit_tables.py:本付録の表48および付録Aの表27を生成する。
本書執筆時の検証では、本書第12.2節・第12.3節・第12.4節の全表および付録B・付録C・第D章の全1/3オクターブバンド値が、\(\pm0.05\,\text{dB}\)の精度(本書の表示精度0.1 dB以内)で再現された。